エアレンディルの冒険 覚え書き(22)

共通歴590年 群羊月 28日

砦の出入り口は、5箇所。 
私たちはその内の一つ、密輸団に助けを求めに行ったゴブリンが出入りしていた扉から侵入することを選んだ。この扉は、カモフラージュされていた隠し扉であるし、運が良ければ、先ほどのゴブリンがまだ近くにいるかも知れないと考えたからだ。件のゴブリンを捕らえられれば、密輸団たちとのやりとりについて詳しい情報が聞き出せるだろう。

森の中を大回りして、砦の奥、隠し扉へと向かった。
コナーが隠し扉の鍵をそっと外し薄く扉を開いた。私はコナーと位置を替わり中の様子を窺った。エルフは夜目が効くので、薄暗い砦の中もかなりの範囲見ることが出来るのだ。 扉の中は、小さな部屋になっていて、雑多な荷物が幾つか転がっていた。ゴブリン共の姿は見えず、下へ続く階段があった。
耳を澄ましてみても、ゴブリン共の声が聞こえなかったので、私たちはなるべく音を立てないように気を付けながら、その斜面を下りた。

階段の下も同じような大きさの小さな空間であったが、一つ違っていたのは奥へと続く扉があることだった。ウルフのシヴァと戦士のアレクセイには魔法使いのフベルトゥスを挟む形で階段の上で待機して貰い、コナーとティリダテネスと私で扉の側に寄った。

扉に近づくと中からゴブリンどもの声がした。どうやら士官クラスのゴブリンが、下っ端を叱責しているらしいと、ゴブリン語の分かるコナーがそっと耳打ちしてくれた。士官クラスのゴブリンというのは、どうやら先ほど砦の外に出たゴブリンらしい。
 
それが分かれば、やることは一つだ。私たちは、後ろで待機しているフベルトゥスらに合図を送ると、扉を開き中に飛び込んだ。