[Memorandum]エアレンディルの冒険 覚え書き (2)

王国歴 590年・開花月・17〜22日

ハードバイの街に戻った我々は、ゴブリンどもが持っていた地図と、高価な芸術品の調査をすることにした。この芸術品(何かのトロフィーらしい)というのがあまりに高価なものだったので、ゴブリンどもがもともと持っている品とは考えられないという意見がフベルトゥスから出たのだ。もちろん私も、この意見にはおおいに納得した。また、優れた石工(ドワーフはみな優れた石工だが)としての彼の勘が、トロフィーの台座に何か細工があることを発見した。

細工を解くのならコナーの出番となる。彼が台座の細工を繊細な手つきでなぞると、まるで魔法のように青銅製の鍵が取り出された。コナーが言うには、台座に隠し収納のようなものがあったという。

役割分担

私は、この青銅製の鍵に刻まれた模様にどこか見覚えがあった。『からみつく一対の牙』……禍々しさを感じるこれを、私はどこで見たのだろうか。そこで、この鍵の調査は私が引き受けることにした。

ならば地図の調査は知者フベルトゥスが……といけば完璧だったのだが、彼はアモッテン師の好意もあって新たな呪文の習得に励むこととなったのだ。

新たな呪文の習得というものは一朝一夕に出来るわけではないので、彼はそのため朝から晩まで呪文書との格闘を始めたのだ。勉強中のフベルトゥスの呪文書をちらりと見せてもらったところ、新しい呪文はどうやら〔識別〕と〔怪物招来〕であるようだった。魔法の波動を解析する呪文と、異界から頼りになる動物たちを召喚する呪文を選ぶとはまことに彼らしい慎重な選択だなと感心した。

彼の手が空かない以上地図の調査も私がすることとなったが、アモッテン師のご厚意で私書をいくつか拝見することが出来たのでスムーズに調べることが出来た。

その間、コナーとティリダテネスは街に出て情報収集をすることとなった。現在のハードバイの情勢、近隣の情報、戦や妖魔どもの動向など実に詳しく調べ上げてくれた。
情報収集役のひとり、ティリダテネスは正直なので(もちろんそれも彼女のすばらしい美徳なのだが)、1人で人間の街に出すのは少々不安だったのだが、その正直さが良い方に働いたらしくたくさんの話を仕入れてきてくれた*1。……まあ、その。翌日からはコナーがさりげなくフォローを入れてくれていたらしいので、ここで改めて彼に感謝をしたい。

調査結果

さて、調査の結果であるが、まずは青銅製の鍵である。この鍵に刻まれていた紋様がどこか禍々しいのもそのはず、これは悪意と洞窟を司る地の女神ベルターの印であったのだ。

そして、地図に記されていたマークは、かつてこのベルター神を奉る神殿があった場所だったのだ! もちろん、邪悪なる神の神殿など栄えるはずもなく、記録によれば同じく地を守護するジャスカー神の戦士たちの手によって数十年前に滅ぼされているはずだ。邪悪なる神殿の跡で、またぞろ邪悪の芽が育ちつつあるのか。

そういえば、高位の邪神官は自らの身を不死者と換え神殿を守護するとも聞いた気がするが……まあ、これは話半分といったところだろう。

次は、コナーとティリダテネスの集めてくれた情報である。まずはここ、ハードバイの街についてである。ハードバイの街はグレイホーク直轄領でも3番目の規模を誇る港町である。およそ100年前にグレイホークから独立し、女性のウィザードや貴族などが権力を握る女性君主による絶対政権体制をとっていた。だが、現在はグレイホーク軍の駐留もみられ、微妙な権力争いを水面下で繰り広げているようだ。グレイホーク政府の禁止する、ブライトランドとの密貿易を政府が行っているという噂もあるそうだが……。

正直私としては、この女権政府や権力争いというものが理解できない。森では、当然男女の差などなく個人の適性や希望で将来が決まる。女性のみを権力の高みに据える意味が分からない。またエルフの森では、責任ある立場には(狩りの長や長老など)その責任を負える者しか就くことはない。
能力がないものが血統だけで王になっても皆が困ると思うのだが? 人間の社会に対する大きな疑問のひとつである。

コナーとティリダテネスはハードバイの現状の他に周辺の地理と妖魔の動向も調べてくれた。気を付けねばならない妖魔は『闇宴族』と呼ばれるゴブリンどもの一群だ。この集団は200匹弱ものゴブリンどもの群れで、ハードバイの街からもときどき防衛のため戦士が出向くこともあるという。

それから、邪悪なる魔術師レスターの拠点も聞き込んでくれていた。彼は攻撃用の呪文や(憎きことだが)他者を操る呪文に精通したソーサラーだということだった。ハードバイの街にもときどき顔を出し、生活用品や呪具を買い足していくらしい。

彼が拠点としている庵を聞き出せたのはティリダテネスの(正直さの)おかげなのだが、どうやら彼が家に戻るまでの護衛として雇われた戦士と意気投合したらしい。これらの調査と情報収集をする間、アモッテン師は快く自宅を開放してくれたことをここに記し、改めての感謝を送りたいと思う。

王国歴 590年・開花月・23日

作戦会議

これらの情報を総合し検討した結果、私たちが次に向かうべき場所は、邪悪なるベルター神の神殿跡ということで決定した。邪悪なる魔術師を放置しておくのはまことに腹立たしいことではあるのだが、彼が襲撃を指示したという確たる証拠もない今、彼を襲うのはけっして善なる行為と言えないという点で皆の意見が一致したのだ。

神殿跡に行く理由に、邪悪なる神殿が今どうなっているのか、そこでこの鍵をどう使うのか、という興味があったことは否定しない。フベルトゥスはウィザードらしく知的好奇心が強いし、コナーは言わずもがな遺跡探索のプロフェッショナルである。私やティリダテネスもエルフであるから(エルフは元来好奇心が旺盛なのだ)、この探索には大いに乗り気であった。

保存食やロープなどを買い足し、私たちはアバー=オーズ丘陵に向けて旅立った。行程としては1日半。何事もなければ、明日の昼前にはベルター神殿跡に着いているはず。我が女神アローナに旅の安全を祈願しつつ、野営をすることとした。

*1:リリーが「えーと、何を聞いたら良いんだっけ?」といった発言をしてプレイヤ一同で頭を抱えている。D&D初心者なのだから止むを得ないわけだが