アレクセイ(2)

アレクセイは予てから傭兵を廃業して、小さい店をハードバイに構える計画を立てていた。

店で取扱うのは武器防具と旅に必要な雑貨類。武器防具なら一通りは扱えるし、雑貨類なら隊商護衛で見知った顔から仕入れることができる。知り合いの役人に頼み込んで、許可証の申請も受理される手筈は整っていた。

残るは開業に必要なまとまった資金だけ。引退を意識してから積み立ててきた金だけではどう計算しても足りないのだ。そこで彼は隊商護衛のような手堅い仕事ではなく、多少はリスクが高くても実入りの良い仕事を廻して貰えるように、傭兵ギルドに頼むことにした。

しばらくして、彼は「あるウィザードの護衛役」という仕事を獲得する。なんでも丘陵にはびこるゴブリンたちの討伐事業に最近めきめきと力をつけている冒険者一行が乗り出すことになったのだが、その際にゴブリンの矛や矢から魔術師を守る人員が必要になったらしい。

邪悪なゴブリンの討伐に協力できることの喜びも手伝って、彼は護衛契約を引き受けることにする。