エアレンディルの冒険 覚え書き (12)

私たちは急な噂に驚きアモッテン師の自宅へと急いだ。堅く施錠された玄関をノックするが、返答はなかった。そこで、ご厚意で預かっていた合い鍵で玄関を開け中に入った。しんと静まりかえった応接室へ入ると〔魔法の口/マジック・マウス〕が発動し、師の声で語った*1

……それは師の遺書と呼べるものだった。

身寄りのない師が、我々を家族のように思ってくださっていたこと。特にコナーが自分の子や孫のように思え、いっしょに過ごせて楽しかったということ。そして自分はいま危険な任務で旅に出ていて、死の危険すらあることなどが言葉少なに語られた。

万が一の場合にはコナーにこの自宅を、魔術師であるフベルトゥスに研究室と魔法の品々を譲るので役立てて欲しいと、隠し扉を開くための合言葉までが添えられていた。

それを聞きながら我々に出来たのは、師の篤いご厚意に感じ入ることばかりであった。旅人である私たちを家族のようだと思ってくださったことで胸が熱くなるのを感じたのだ。

───だが、と我々は考えた。

師のご厚意を受け、遺品を受け取るだけで良いのかと考えた。なぜならばこの街には〔死者の復活/レイズ・デッド〕を行使できる徳の高い司祭様がいらっしゃるのだ。もしもアモッテン師の訃報が本当だったとしても、まだ蘇生できる可能性が残されているのだ。

もちろん〔死者の復活〕とて万能ではない。蘇生の秘術の中では比較的一般的な(それでも私では行使できない高い位階のものであるのだが)〔死者の復活〕には制限がいくつかあり、その最も大きなものは、蘇生に遺体を必要とすることと、時間的制限が厳しいことだ。聞き及ぶことには、司祭様の御力でも死者を呼び戻せるのは十日が限度という。

彼は4日前に我々の出発を見送って下さったのだから、亡くなったとしてもその後のことだろう。残された時間はおよそ5日程度。迅速に情報を収集し移動できれば、時間内に彼の遺体を発見し蘇生できる可能性はまだある。ゴブリン討伐のために雇った戦士のアレクセイも善意で協力してくれるという。まことにありがたい。

*1:パーティの秘術呪文使いの種族・風貌などを発動条件としていた。