エアレンディルの冒険 覚え書き (8)

共通歴 590年・群羊月・2〜14日

平穏な日々

それから十日余りは、何事もなく平常に過ぎていった。コナーはどこへともなく姿を消しては情報を入手してきて皆に披露してくれたし、ティリダテネスは剣の鍛錬を欠かさなかった。私も時折は彼女の相手を努め、それ以外は神殿で(微力ながら)聖務の手伝いをさせていただいた。フベルトゥスは、日々アモッテン師の自宅へと通い呪文のさらなる研鑽を積み、魔法実験の助手をほしがっていた師のためには、皆で細々とした雑用を手伝ったりもした。

故ジャスカー神官の遺族探しは難航しているようで、神官殿がわざわざ宿まで尋ねてきてもう少しの猶予がほしいと伝えてくださった。もちろん我々に異存はなかった。

厳しい戦いの疲れを癒すための休養は、ひとつの依頼で幕を閉じた。

氏族「闇の宴」

その依頼とはゴブリンの一族「闇の宴」の討伐であった。コナーが手に入れてきた情報で、ベルター神殿跡に巣くっていたゴブリンどもが闇の宴団の一員であると知っていた我々は、これも何かの縁と依頼を引き受けることにしたのだ。

「闇の宴」は200人規模の集団であるとされている。ハードバイの街から片道3日ほどの場所に居を構え、邪悪なる獣ヴォーグや、大狼ダイアウルフなどを使役する手強い一団である。時折街近くに出没することがあり、その際は討伐対が組まれることがあった。

近頃その動きが活発になってきたので、街に被害が出る前にその脅威を根絶したいとのことだった。

戦支度

我々はそこにたどり着くまでの充分な食料を用意し、多対少数の戦いを想定して準備を行った。下位の妖魔であるゴブリンどもには、フベルトゥスの〔眠り〕の魔法が良く効くのだが、1日に唱えられる呪文には限りがある。そこで、〔眠り〕の魔法こもったワンドを探しだし、傷を癒す薬や魔法の巻物などと共に購入した。

また、魔法使いであるフベルトゥスの身を守るために、護衛の戦士を雇うことにした。野外では(そして狼の移動力の前では)、我々4人だけでは充分に彼を守ることが難しいと判断したからである。護衛の依頼に名乗りを上げてくれたのはアレクセイという青年だった。高潔にして善なる心を持った彼は、バスタードソードとロングスピアを巧みに使い分け、敵を迎え撃つ力に秀でた傭兵だった。

彼を加え総勢6名(短剣のハランダーを入れると7人だろうか)となった我々は、食料などの雑貨を運ぶべく小さな荷馬車を購入した。馬車があれば、いざという時の遮蔽にもつかえるし、普段は身につけない予備の武器なども運ぶことができる。予備の武器や食料などはかさばるものだが、200匹からなるゴブリンどもを相手にするのだ。用心に越したことはないといえた。