エアレンディルの冒険 覚え書き(16)

王国歴 590年・群羊月・20日

砦の中は既に戦闘態勢が整っているようであった。姿こそ見せないが、敵が各所に配置され我々を待ち受けていることが感じられた。だが、我々は引くことは出来ない。アモッテン師の遺体はこの先にあるのだから。

我々はティリダテネスを先頭に立て、すぐ後ろには回復役の私、その頭上(!)にコナー、真ん中にフベルトゥス、最後尾はシヴァとアレクセイが守るという隊列で慎重に歩を進めた。

まず敵はT字路で襲ってきた。正面から戦士と蛮族がティリダテネスを襲い、左右の通路の先では魔術師がワンドを構えてこちらを狙っていた。さらに弓兵も扉の影に潜んでいる様子だった。

普通なら、ティリダテネスは最大で3人の戦士の攻撃と、魔法使いの呪文、さらには弓兵の矢を耐えねばならないところであったが、〔蜘蛛渡り〕のスリッパを履き、頭上にいたコナーがそのうちの何割かの攻撃を引き受けてくれた。

戦士たちの腕はティリダテネスに遠く及ばないものであったので、彼女はその攻撃を危なげなく逸らし、また的確な反撃をしていくことが出来た。2人の魔法使い(ソーサラーのように思われる)は、〔魔法の矢〕のワンドを振るっていたが、そのダメージも私が癒しきれる範囲に収まっていた。

後方のフベルトゥスが、扉の影の弓兵と、敵後衛の戦士を眠らせてくれたことで戦いが楽になった。幾人かの戦士を倒し、余裕が出たコナーが、魔術師の一人を倒し、呪文の脅威も減った。戦いは私たちに有利に傾いてきた。

そんな時、正面から2刀流の戦士が現れた。二つの武器を操る術はレンジャー特有のものだ。かなり修行を積んだ戦士にも同じことが出来るそうだか、彼の動きはそこまでではなさそうだった。それでも、今の私たちよりは充分な手練れなのだが。
そんな彼でもティリダテネスを倒すことはできなかった。彼女は生来の資質に加え、戦士としての鍛錬、そして「戦い」の中に身を置くとこを経験し、優秀な戦士に育っていたのだ。その彼女を、同じく戦士としての鍛錬と、盗賊としての技を併せ持つコナーが補助し、フベルトゥスが的確な魔法の援護を行う。私がこの戦いですべきことは、少しでも彼女が傷ついたらその傷を<治療>するだけだった。

やがてレンジャーは倒れ、残った敵も我々の相手ではなかった。我々は(息のあったもの)の武装を解除し、おそらくはこの砦の中枢メンバーであろうレンジャーに簡単な治療を施し、目覚めさせた。砦内部の詳しい構造、及び戦力を聞くために。