エアレンディルの冒険 覚え書き(17)

王国歴 590年・群羊月・20日

彼が言うには、中枢メンバーである冒険者(彼を含んだパーティらしい)は、ちょうど砦を留守にしているということであった。主要なメンバーは、首領の「戦士」、参謀の「魔法使い」、「司祭」(ドルイドのように思える)、「コック長」(……ローグなのだろうか?)、そして彼の5人。特に首領はグリフォンを手なずけ、それによって移動するのですぐ帰還するとのことだった。

彼と同レベルの、しかもパーティを敵陣で相手取るのはいかにも不利なので、我々は迅速に砦の捜索に取りかかった。アモッテン師の遺体を発見後は速やかに撤退できるように心しながら。

〔念視〕通りに、1階は小部屋がいくつかあり、捕虜としたレンジャーの話に従ってあるひとつの部屋に入った。そこは、密輸団のボスが使っているであろう部屋で、取引の目録や、いくつかの書き付けなどがあった。

それらの書類に目を取られている隙に、レンジャーは縄で縛られたまま隠し扉(そう、隠し扉があったのだ)の向こうへと身を翻した。

単身追ったコナーだったが、レンジャーは先の小部屋にあった脱出路から姿を消してしまった後だったようだ。脱出路先はシュートになっていて、一度に何人もが追いかけられる作りではなかったし、この砦に来た目的はアモッテン師の救出であったことなどから、それ以上の追跡は諦めざるをえなかった。


別の扉を開けると、アモッテン師と、見たことのない男の遺体が無造作に放り出されている部屋だった。私は、彼の遺体に駆け寄り、ペイロア神殿より賜った〔死者蘇生〕の巻物を注意深く読み上げた。やがて、ゆっくりと目を開け、不思議そうに我々を見上げた。

我々は、手早く彼に事情を説明した。貴方の遺言を聞いたこと、そして復活を決意し、様々な人の手を借りてここまで来たこと、そして今復活を果たしたということ。さらに、密輸団の中枢メンバーが留守であったことや、すぐに帰還する予定であることなどである。

彼はすぐに事情を理解し、素早い帰還の為の策を我々に話してくれた。彼も移動を<瞬間移動>で行ったため、帰りの分と予備の巻物が砦のどこかにあるはずで、それを使ってハードバイへ戻ってはどうかと提案してくれたのだ。

我々は、彼の言に従って砦の捜索を再開した。

レンジャーから砦の構造を聞きだしていたこともあって魔法の品を置いた倉庫もすぐに見つかり、その中から師の持ち物である〔瞬間移動〕の巻物を取り返すことができた。その途中で、囚われていた女性(豪族の姫君らしい)を救出し、一旦ハードバイへ(魔法で)帰還する予定であることを納得して貰い、同行することとなった。

人数が増えたこともあり、余分な荷物(保存食や雑貨など)を捨て、残っていた呪文で重量を減らす等の修正をしながらであったが、無事〔瞬間移動〕で、師の自宅まで戻ってくることができた。