エアレンディルの冒険 覚え書き(17-3)

王国歴 590年・群羊月・21〜22日

ゴブリンの一団の脅威があるとはいえ街道沿いの路であり、一度走破した道であったことも幸いし、我々は無事にベルター神殿跡へたどり着くことが出来た。
途中で、(ペイロア神殿からの)知らせを受け取ったらしい神官戦士たちに会うこともできた。別れ際に神官戦士団からの、武勲の祈りを受けることも出来たので、(我が女神の加護に加えて)彼の神のご加護も得られることだろう。

ベルター神殿の地下に入ると、以前より一層『闇』の気が強くなっていた。やはり地下の不死者が目覚めているらしい。気を付けながら地下一階部分、地下二階部分と移動し、不死者が封じられている扉の前に到着した。そこにあったはずの封印は、破り取られたかのようになくなっており、固く閉ざされていたはずの扉も開かれていた。

部屋の中には、『吸血鬼』と、それが作り出したであろう骸骨の群れが待ちかまえていた。元は邪神に使える神官であると言う情報の『吸血鬼』は、〔冒涜〕の術で場を不浄なる者たちに都合の良いように汚していたが、それを見越して〔聖別〕の巻物を用意してきた。私は、銀の粉を巻き、祈り、場を清めることで、不浄なる気を払う。
汚された場の中では常に倍する脅威を誇る骸骨どもも、こうしてしまえばティリダテネスの敵ではない。レイピアという奴らと相対すには不利な武器であるにもかかわらず、次々と奴らを倒していく。彼女はほとんど一息で骸骨どもを倒してしまった。私が神に〔不死者退散〕の祈りを捧げる暇がないほどに。

さらにフベルトゥスが〔加速〕の術を我々三人に掛けてくれたことで、常にない動きをすることが可能となった。私は、給血鬼の特殊能力である〔生気吸収〕を防ぐために、〔負のエネルギーからの防護〕の巻物を読み上げながらも、吸血鬼と戦うティリダテネスやコナーの元まで駆け寄ることが出来た。吸血鬼と対する彼ら二人は、コナーがヤツの気を散らしながら、その隙をティリダテネスが確実に突くという連携を見せていた。

ヤツは忌わしき不死者になることで様々な力を手に入れたのだろう。が、失ったものもまた多い。そのひとつが〔治療〕呪文による自身の回復ができないこと、だ。
彼が我々に与える打撃と、我々が彼に与える打撃が同じであっても、私たちには神が授けてくださる〔治療〕の術がある。

──吸血鬼が塵となり、完全に滅び去るまでそう長いことは掛からなかった。