エアレンディルの冒険 覚え書き(13)

そこで我々は役割を分担し、各所へと走ることとなった。

コナーは街の至る所に足を伸ばし情報収集を担当した。

アモッテン師は本当に亡くなったのか? 噂の出所は? 師の受けていた依頼とはなにか? 誰が師に依頼したのか? 師を最後に見たのか? などなど私たちが思いつくままに挙げた疑問を彼は根気良く、しかも手早く調べ上げてきた。

それによると、師は4日前に私たちを送り出してすぐ家を留守にしたらしかった。数人の仲間と連れだってアーバ=オーズ方面へと旅立つ姿を見た者もいた。だが、依頼の内容を詳しく知るものはおらず、おそらく政治に関わる状況なので口止めがされているのだろうということだった。

ティリダテネスとアレクセイは『闇宴族』退治の依頼を一時中断して貰えるように傭兵ギルドへ行き、事情を説明した。本来ならば依頼を放棄したものとして違約金を取られるところだが、アモッテン師の復活のための中断ならば、とギルドの方は了承してくれた。
一応、担保という形でいくつかの宝石類提出を求められたが、これも形ばかりのもので、師の復活に伴う経費が足りなければいつでも返還すると暖かい言葉も頂いたらしい。
これも、師の穏和な人柄が、この街で愛されているという証だろう。

私は、この街最高位の司祭であるクーパー司祭長と面会し、〔死者の復活/レイズ・デッド〕の行使を願うためにペイロア神殿へと急いだ。神殿で事情を説明すると、お忙しいはずの司祭長が直接に面会してくれ、協力は惜しまないと言ってくださった。しかも、アモッテン師の死体を見つけたらその場で蘇生が出来るように巻物に術を封じて下さるという破格のご厚意を受けることができた。時間的猶予がないと誰よりも分かっている司祭長は、さっそく巻物の作成へと取り組んでくださり、二日の後にそれを受け取ることとなった。

フベルトゥスはこの街で最高の秘術呪文使いであるゲイル老師の家を訪ねた。アモッテン師の現在位置を知るための〔念視/スクライング〕行使と、迅速な移動を可能とする〔瞬間移動/テレポート〕の巻物を購入するためである。
〔瞬間移動〕の巻物は老師が冒険していた時代に使っていたものがいくつか有ったので、すぐに手に入れることができたのだが、何故か〔念視〕の行使については芳しい返事が得られなかった。老師とアモッテン師は魔術師同士で知己であったはずなのだが。なにか事情があるのだろうか?

エアレンディルの冒険 覚え書き (12)

私たちは急な噂に驚きアモッテン師の自宅へと急いだ。堅く施錠された玄関をノックするが、返答はなかった。そこで、ご厚意で預かっていた合い鍵で玄関を開け中に入った。しんと静まりかえった応接室へ入ると〔魔法の口/マジック・マウス〕が発動し、師の声で語った*1

……それは師の遺書と呼べるものだった。

身寄りのない師が、我々を家族のように思ってくださっていたこと。特にコナーが自分の子や孫のように思え、いっしょに過ごせて楽しかったということ。そして自分はいま危険な任務で旅に出ていて、死の危険すらあることなどが言葉少なに語られた。

万が一の場合にはコナーにこの自宅を、魔術師であるフベルトゥスに研究室と魔法の品々を譲るので役立てて欲しいと、隠し扉を開くための合言葉までが添えられていた。

それを聞きながら我々に出来たのは、師の篤いご厚意に感じ入ることばかりであった。旅人である私たちを家族のようだと思ってくださったことで胸が熱くなるのを感じたのだ。

───だが、と我々は考えた。

師のご厚意を受け、遺品を受け取るだけで良いのかと考えた。なぜならばこの街には〔死者の復活/レイズ・デッド〕を行使できる徳の高い司祭様がいらっしゃるのだ。もしもアモッテン師の訃報が本当だったとしても、まだ蘇生できる可能性が残されているのだ。

もちろん〔死者の復活〕とて万能ではない。蘇生の秘術の中では比較的一般的な(それでも私では行使できない高い位階のものであるのだが)〔死者の復活〕には制限がいくつかあり、その最も大きなものは、蘇生に遺体を必要とすることと、時間的制限が厳しいことだ。聞き及ぶことには、司祭様の御力でも死者を呼び戻せるのは十日が限度という。

彼は4日前に我々の出発を見送って下さったのだから、亡くなったとしてもその後のことだろう。残された時間はおよそ5日程度。迅速に情報を収集し移動できれば、時間内に彼の遺体を発見し蘇生できる可能性はまだある。ゴブリン討伐のために雇った戦士のアレクセイも善意で協力してくれるという。まことにありがたい。

*1:パーティの秘術呪文使いの種族・風貌などを発動条件としていた。

ドワーフ族からの報酬

闇宴族の洞窟から子供たちを救い出してくれた英雄達に、ドワーフ族は宝物蔵の奥深くにしまっているミスラル塊から作り出した武具を提供することを約束した*1。彼らが提供するミスラル製武具は人間用の重装鎧1着と中装鎧1着までのものであり、しかるべき対価を支払えば、快く提供してくれる。

*1:当初は塊としての予定だったが、加工期間が予想以上にかかるので修正